沖縄野鳥

シロガシラ

農作物への影響が甚大、勢力を拡大中

シロガシラは、沖縄島や八重山諸島、九州北部の一部に留鳥として分布しています。沖縄島では1976年に糸満市で初めて記録され、1996年には名護市や本部町、1998年には国頭村や離島まで分布を拡大しました。現在では、本島全域で見られるほど定着しています。

群れで水浴びする様子 - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)
群れで水浴びする様子 - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)

もともと渡りによって飛来したのか、それとも人の手によって持ち込まれたのかは不明ですが、農耕地や人家の近くでもよく見られるようになり、沖縄の身近な鳥の一つとなっています。10羽の群れで行動し、繁殖期には目立つ場所で活発にさえずる姿が観察されます。
囀る声もヒヨドリに比べると美しく、軽快なメロディを奏でます。

農作物への影響

ガジュマルの実を食べるシロガシラ
ガジュマルの実を食べるシロガシラ - 2025.03.09 漁港(沖縄県南城市)
畑の周りにいるシロガシラ - 2025.03.02 畑(沖縄県南城市知念)
畑の周りにいるシロガシラ - 2025.03.02 畑(沖縄県南城市知念)

シロガシラは雑食性で、昆虫類のほかに果実や野菜なども食べます。沖縄では農作物への被害が深刻化しており、トマト、サヤインゲン、キャベツ、レタスなどの葉菜類、根菜類、さらには花木類まで影響を及ぼしていると報告されています。防鳥対策がされていない畑では被害が特に甚大で、収穫を放棄する農地が出るほど深刻な状況だそうです。
鳥除けのグッズなども慣れてしまい、効果が薄くなっているようです。

以前はヒヨドリが主要な加害種でしたが、ヒヨドリに代わって農作物を荒らす存在になっています。特に1~2羽で行動するヒヨドリと異なり、シロガシラは数十羽の群れで農作物に被害を与えるため、影響がさらに拡大しています。

畑でシロガシラを撮影していると農家さんから「農作物を食べられて困っている」との話を聞くことが多々あります。それほど影響力が強いようです。

生態系への影響

シロガシラは新しい生息地への適応力が強く、人に慣れていることもあり分布域を拡大し続けています。その結果、優先種であるヒヨドリとの競争が発生し、ヒヨドリが占めていた生息地が脅かされる可能性が指摘されています。すでに一部の地域では、シロガシラがヒヨドリに代わって優勢種となっているという報告もあります。

また、シロガシラの定着は農作物への影響だけでなく、沖縄の貴重な固有種への影響も懸念されています。特に、多様な果樹類が栽培されている北部地域への進出は、生態系のバランスにも影響を与える可能性があり、今後の動向が注目される鳥の一つです。

参考:
植村慎吾「決定版 見分け方と鳴き声野鳥図鑑350」
国立科学博物館「鳥〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系譜〜」
金城常雄「沖縄本島にお けるシ ロ ガシラの生態と被害防止対策」

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