沖縄野鳥

カワウ

冬になると集団で羽を乾かす様子を見かけます

冬になると沖縄の湿地や湖、ダムなどいろんな場所で遭遇します。

飛び立つ瞬間 - 2025.01.25 南風原ダム(与那原町与那原)

数万羽の群れを形成

集団で飛行するカワウ - 2025.02.11 漫湖(沖縄県豊見城市豊見城)
集団で狩をするカワウ
集団で狩をするカワウ - 2025.02.26 佐敷干潟(沖縄県南城市佐敷冨祖崎)

カワウは全国的には留鳥ですが、沖縄では毎年10月頃に冬鳥として渡ってきます。ウ科42種類のうち最も分布が広い種です。
カワウは、集団性が強い鳥でよく複数羽一緒にいる様子を見かけます。
採食や就塒では数羽から、時には数万羽の群れを形成するそうです。

カワウが翼を広げる理由

2025.02.23 三角池(沖縄県豊見城市与根)
羽を乾かす - 2025.02.02 龍潭池(沖縄県那覇市首里真和志町)

カワウは翼を大きく広げて休んでいる姿をよく見かけます。これは威嚇などではなく、単に羽を乾かしてるそうです。
カワウは魚を捕るために潜りますが、羽毛が水を弾かないため、水中で余計な浮力が生じず、スムーズに潜ることができます。その反面、羽毛の中に空気を溜められず、水を含んでしまうそうです。
そのため、そのままでは体が冷え、飛ぶのも難しくなります。そこで、翼を大きく広げて乾かします。

カモをはじめとする水鳥たちは「尾脂腺(びしせん)」という器官から分泌される脂を羽毛に塗って撥水性を持たせていますが、カワウはその脂を分泌する器官があまり発達していないようです。

鵜飼とカワウ

岐阜の長良川では、1300年の歴史を持つ伝統漁法「鵜飼」が有名です。鵜匠が巧みに鵜を操り、魚を捕らせるこの漁では、ウミウが使われています。しかし、奈良時代以来、カワウを使う地域もあり、中国では現在もカワウが鵜飼に利用されています。

カワウの増加と人間活動への被害

1970年代、日本国内のカワウの繁殖地は不忍池などわずか3カ所にまで減少し、個体数も大きく減っていました。これは、餌資源の減少や有害物質の蓄積が影響したと考えられています。しかし、その後個体数は回復し、現在では最も分布を拡大している種の一つとなりました。
カワウは、餌となる魚がいれば年中いつでも繁殖できるため、個体数の増加が続いています。その結果、漁業への被害が問題視されるようになり、国はカワウの個体数を半数まで減らす計画を進めています。
数年で目標を達成できる可能性もありますが、大規模な個体数調整が行われれば、日本全国からカワウがいなくなってしまうほどの強い影響を与えるかもしれません。かつての1970年代のように激減してしまう未来を想像すると、少し悲しい気持ちになります。

生態系にとって重要な役割もある

排泄するカワウ - 2025.03.01 沖縄県与那原町与那原
排泄するカワウ - 2025.03.01 沖縄県与那原町与那原

カワウはコロニーを形成する性質があり、公園や観光地では単なる植生被害にとどまらず、糞や吐き戻しによる木の枯死や景観の悪化も問題となっています。しかし、一方でこれらの排出物は、水にある栄養素を陸に運ぶ役割を果たしているとも言われています。
枯れた木が堆積すると、土壌に豊富な栄養が蓄積され、次世代の植物の成長を促すこともあります。特に、栄養供給がない海上の孤島では、鳥類が運ぶ栄養素が生態系にとって重要な役割を担っている可能性があります。
そのため、カワウによる影響を単純に「被害」と捉えるのではなく、長い年月の中で生態系全体にどのような影響を及ぼすのかを考えることが大切なのだそうです。

参考:
加藤ななえ「カワウの生態」
日本野鳥の会東京「身近な野鳥の識別講座③ カワウの話」
植村慎吾「決定版 見分け方と鳴き声野鳥図鑑350」
国立科学博物館「鳥〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系譜〜」
加藤洋「カワウ被害対策強化の考え方と今後の課題に対する考察」