リュウキュウキジバト
街にも森にも暮らす野生派ハト

- 分類
- ハト目ハト科
- 渡り区分
- 留鳥
- 体長
- 33cm (キジバトと同じくらい)
- レッドリスト
- 低危険種(LC)
キジバトは、北海道では夏鳥、それ以外の地域では留鳥として一年中見られる身近なハトです。沖縄県を含む南西諸島には、その亜種であるリュウキュウキジバトが留鳥として分布しており、山から街までさまざまな場所でその姿を見かけます。
リュウキュウキジバトは、九州以南に分布するキジバトの地域変異型です。
分布の北限である屋久島付近では本土型との中間的な個体も見られるなど、分布の境界線ははっきりとはしていません。沖縄本島でも、基本的にはリュウキュウキジバトが分布していると思われるものの、個人の観察では「亜種キジバトでは?」という個体の報告もあり、ダイトウウグイスのような例もあることから、両方の可能性も否定できないのが現状です。
山のハトから街のハトへ
今でこそ街路樹や公園、建物の縁に巣をつくる姿が普通に見られるリュウキュウキジバトですが、1970年代までは山林に生息し、冬に市街地へ漂行する「ヤマバト」として知られていました。それが現在では、都市部でも繁殖・定着するようになり、人との距離がぐっと縮まりました。
とはいえ、外来種の**ドバト(カワラバト)**ほど人慣れしておらず、人が近づけばすぐに飛び去るなど、一定の“野生らしさ”を今も残しています。徳之島など一部の島嶼では、あまり人を恐れない様子も報告されていますが、これは狩猟圧の低い環境特有の現象かもしれません。
一年中聞こえる「デーデーポッポポー」

リュウキュウキジバトは暖かい南西諸島では一年中繁殖しており、繁殖期が特に長い鳥のひとつです。オスのさえずりは「デーデーポッポポー」という特徴的なフレーズで、特に早朝によく聞かれます。昔、「あれはハトの寝言だ」という話を聞いたのですが、そんなことはありませんでした。
地上でのんびり餌探し、そして日光浴

リュウキュウキジバトの食性は雑食性で、果実や種子を中心に、昆虫やミミズ、陸産の貝類までさまざまなものを食べます。地面を歩きながら餌を探すことが多く、林の中や農道、路肩などでせっせと採食する姿がよく見られます。
また、日光浴(虫干し)を好む鳥としても知られており、晴れた日には羽を半開きにしてじっと地面に座り込み、のんびりと日差しを浴びる姿も観察されます。
リュウキュウキジバトとキジバトの違い
最後に、南西諸島以外に生息する通常のキジバトとの違いを整理しました。生態的な特徴はほぼ同じで、リュウキュウキジバトの方が見た目が少し濃い感じです。ただ差はそこまで大きくなく、野外での区別は難しそうです。
項目 | 亜種キジバト(S. o. orientalis) | 亜種リュウキュウキジバト(S. o. stimpsoni) |
---|---|---|
分布 | 本州・四国・九州で留鳥(北海道は夏鳥) | 屋久島から南西諸島で留鳥 |
羽色 | 全体的にやや淡色で灰褐色が強い | 全体的に赤みの強い濃色、翼の鱗模様が黒っぽい |
翼・尾の長さ | 体に比してやや長めでスラリとした体型 | やや短めでずんぐりした体型(島嶼亜種での傾向) |
目の周り | 虹彩は橙色、眼の周辺は小さめの赤色 | 虹彩は橙~赤色、眼の周辺は大きめの赤色 |
参考
- 植村慎吾「決定版 見分け方と鳴き声野鳥図鑑350」
- 高野伸二「フィールドガイド日本の野鳥」
- Bird Research News Vol.3