沖縄野鳥

バン

ヤンバルクイナ?いいえバンです

バンは、ユーラシア大陸、アフリカ、南北アメリカなど世界中の温帯から熱帯域に広く分布する鳥です。日本国内でも伊豆諸島や小笠原諸島を除くほぼ全国に留鳥として生息し、繁殖も広範囲で確認されています。ただし、北日本では夏鳥として現れ、かつては全国的に夏鳥だったようです。

沖縄県内では「クミラー」と呼ばれ、水田を害敵から守る「田の番をする鳥」として、その名がついたとされています。しかし、全国鳥類繁殖分布調査によると、1970年代以降、バンの記録は減少傾向にあります。特に水田での餌生物の減少が影響していると考えられ、ネオニコチノイド系農薬の使用による影響も指摘されています。

水辺にひっそりと暮らすバン

水草を食べる様子 - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)
水草を食べる様子 - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)

バンは湖や沼、池、川などの水辺を好み、単独で草陰や水田で餌をとることが多い鳥です。雑食性で、水草や草の実などの植物質から、水生昆虫やヌマエビなどの動物質まで、なんでもよく食べます。水面を泳ぎながら餌をとることもありますが、オオバンのように広い水面に群れで休むことはありません。

泳ぐときは尾を上げた姿勢をとり、首を前後に振りながら進むのが特徴的です。飛ぶのはあまり得意ではなく、水面を足で蹴って助走しながら飛び立ちますが、長距離を飛ぶことは少ないようです。

ヤンバルクイナと間違えられることも

走る様子ヤンバルクイナに見えなくもない - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)
走る様子この角度だとヤンバルクイナに見えなくもない - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)

バンはクイナ科の鳥で、地上をそこそこ速く走るため、沖縄ではヤンバルクイナと間違えられることもあります。
かつては夏が旬の鳥とされ、ゴイサギやチドリ類とともに鷹狩りの獲物として重宝されていました。現在では野生のバンを狩ることはほとんどありません。

おそらくバンの幼鳥 - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)
おそらく幼鳥 - 2024.02.16 比屋根湿地(沖縄県沖縄市泡瀬)

参考:
植村慎吾「決定版 見分け方と鳴き声野鳥図鑑350」
国立科学博物館「鳥〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系譜〜」
高野伸二「フィールドガイド日本の野鳥」